細密画と聞くと、どんな絵を想像するでしょうか?

細密画は、描く対象を細かく緻密に描きこんだ絵、と広く定義されるので、
「これが細密画」というものはありません
デッサンが正確な形態や遠近感、重量や質感、
描く対象の内面まで踏み込んでいく本質的なものを描くことが重要であることに対して、
細密画は、描き手が「緻密に描きたい」とと感じた欲望そのままを
ひたすらに感じさせる緻密な絵肌の表情が
見ている者に感じさせる迫力があるのではないでしょうか。
また、西洋のデッサンが「面」でとらえる描写が多いのに対し、
アジアの美術には「線」を強調し、
実際に見えてはいない部分まで
描きこむことで、質感や奥行きを排除してしまったかのような
画面に感じられることもあります。
今回、小学生のお兄さんお姉さん達は
描きたいものの写真など、2次元の画像を参考にしながら、
じっくりと描きたい部分を細部まで描きこむことに挑戦しました。
パンダを描く子は、黒く見えた部分をただ黒く塗りつぶすのではなく、
線や面の重なりで陰影をつけるように。
毛並みの一本一本を生やしていくように描きこみましょう。
小さな細い一品一本が生き物の毛並みになるんだよ、と伝えたら
手の動きが慎重に丁寧になってきました。
細密画のルーツをたどれば、インドやイスラム文化も参考となります。
中世の経典の写本や、書物の挿絵として登場し、
ヒンデュー教やペルシャ文化、西欧絵画の影響を受けながら
地域によって
それぞれ独自の発展をしていきました。
宮廷のようすや神話や歴史、叙事詩などが題材にされ、
色鮮やかな色彩で明確な輪郭線をもって細かく描かれていることが特徴です。
細かく描く、ということは丁寧に描くということでもあります。
神への畏敬の念や、自然への敬意が
細かく丁寧に描く、という行為につながったのかもしれません。
本当に自分が描きたい!と感じるものでなければ、
描きたくないものをじっくりと描き続けるのはつらいことですが、
長い時間をかけて、これだけ集中して描きこんだ皆は
鳥の羽の色合いの美しさやや動物ふわふわ、チクチクした毛並み、
表情など、描きたい部分がきっと見つかったのでしょうね